壺屋の歴史の一頁に深く刻み込まれた前回の「折敷」による展覧会が終わり、興奮冷めやらぬ時期に報告を兼ねて川北家を訪ねてから、かれこれ3年の月日が流れた。あの時に「次回展は掌(たなごころ)におさまる作品での展覧会をお願いしたいのですが」とまたも不躾にも店主の興味の赴くままにお願いした。
川北浩彦というものづくりと付き合い始めて早15年。当初は戸惑われたと察する。何処の誰ともわからない、それも陶器を中心に扱う関西の聞いたこともないギャラリーが、突然なんの前触れもなく訪れたのだから。
暖簾を上げて25年を超えたが、今思い返すとどの作家との付き合いも始まりは似たり寄ったりだった。ただ、歳月をかけ店の考えをわかってもらい、お客様の情熱に触れていただき、展覧会が充実していく、この傾向も変わらない。そしてなにより、作り手が会を重ねるたびに新たな一面を見せてくれ、各々が進化した先の作品を披露してくれる。本当に幸せなギャラリーだと思う。
今展での川北作品。店主の想像を遥かに超えた作品群を揃えてくれている。銘木という言葉がピッタリとくるような杢を見せる木や今では手に入らないような材、果ては立ち木自体に歴史的云われのあるものまで。掌(たなごころ)というテーマに添って、茶道具の茶碗・茶入・香合にはじまり替茶器や香立てに小ぶりの一輪挿し、銘々皿から新作の酒器まで。実にバラエティー豊かでどの作品も見応えがあり、お客様を魅了することと思う。前回の「折敷展」の空気感を凌駕すると言っても過言ではない作品たちが仕上がってきている。
もちろん、今展でも父上の良造先生、ご子息の浩嗣さんの作品もならぶ。楽しみな展覧会がまた始まる。