お待たせしました。昨秋、告知しておりました壺屋開廊25周年記念として、伊部茶盌を中心とした頒布会がいよいよ幕を開けます。彼との歩みも25年、頒布会としては32回目の開催となります。振り返れば、あっという間の25年とも、長い道のりであった25年とも思えます。
今展の最終打合せにと松の内に伺った折、染色織物工芸の世界で活躍し始めたお嬢さんも交えての楽しい時間となりました。初めて伺った日の互いの新鮮な驚きに始まり、ここまでの道程に、感慨一入の思い出話に花が咲いたひとときでした。聞き役のお嬢さんにも、作家とギャラリーの関係を超えた部分の空気感が少し伝わったように感じています。
これから彼と歩む道がどんな景色になるのか、それは私にもわかりません。ただ、これまで歩んできた彼との道に、一点の曇りもないのは事実です。ものづくりが襟を正して生き、生み出すものに、正直に応えてきた景色は素晴らしいものでした。今回の茶盌にも十二分に金重巖というものづくりのその精神と景色が宿っています。
自分の道を歩み始めたばかりのまっすぐなものづくりと交わると、あらためて自身の矜持を問われているような気がします。これからも、胸を張って生き様を見せることができる歩みを続けていきたいものです。
お嬢さんが丹精を込めて初めて生み出す古帛紗が、今展で新しい風を吹かせてくれればと願っています。
『花無心招蝶 蝶無心尋花』(良寛) |