1957年生


火色
 スイッチが入ったようである。前回の個展は、六代・直方として新たな造形の模索から生まれた「壺」での展覧で、会場を訪れた方々を大いに楽しませてくれた。
 あれから丸3年。昨年各地で開催された一連の還暦展での続けざまの焼成の中からヒントを得たという、新たな「火色」を今回の展覧のテーマに据えることとなった。
 六代として直方を襲名以来、ここ数年駆け足で過ごしてきた。この間に五代を見送り、自身の還暦という一つの節目を過ぎ、「六代として」の模索はいよいよその深きを求めるものとなっている。改めて上田直方としての系譜を見つめ直し、我が成すべき道を模索し、上田家伝統の信楽の火色をさらに昇華せんと考え始めていた矢先に出会った新たな「火色」。彼自身のあくなき探究心の炎が大いに燃えはじめたようである。
 代々仕事を継承していくという作業。周囲の人間が考えるほど、甘い世界ではあるまい。150有余年の歴史を刻んだ「上田直方」という名跡は、簡単に語りつくせ、越えていける道のりではない。ましてや、その時代の先頭を歩んできた代々の職人技と対峙するということは、逃げ出したくなる葛藤との戦いでもある。ただ、そこから目をそむけず、真正面から取り組んだ者には、時代を超えて燦然と歴史に名を刻むという、計り知れないご褒美があるはずだ。
 六代・上田直方。還暦を過ぎ、いよいよその本性を現そうとしている。果たして、その一端を今展で見せるや否や。すべては彼の作り手としての生きざまに帰結する。絶対に逃げていては見えぬ世界がそこにはある。
 人が一生を賭し成し得た仕事というものには、時代の流れなどクソ喰らえである。
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