1968年生


 「cobos」聞きなれない言葉ですよね。まず何と読むのか。日本語読みをすると「こぼす」。スペイン語っぽくもあり、はたまたワイン好きの貴兄におかれてはアルゼンチンのワイナリーと薀蓄を御説されるのか。種明かしをすると、実は今回の展覧会にとムッシュ角居が生み出した造語です。
 昨年春、彼の制作拠点「場」を訪れると、ひとつの面白い作品を見せてくれました。昔からある桝酒を飲む習慣に、「盛りこぼし」というお作法が存在します。それを錫器で表現したシロモノ(作品)で、ある長野の割烹店からの注文で制作したというものでした。
 即座に反応するのが壺屋店主の流儀。『これは面白い!来年夏までに数十種類制作して展覧会を開こう!』と提案。即決です。『それには、展覧会の名称も斬新なもので・・・』。そこはノリのいいムッシュ、その場で『こぼし・・・こぼす・・・ローマ字書きすると・・・COBOS・・・洒落て小文字で・・・』となった次第。
 またまた世にも不思議な展覧会がまもなく始まります。こぼすことを前提にした作品など存在しないのではないか、から始まり、どのようにこぼすのが芸術的か、そしてどのように受けるのが洒落ているのか。この1年ワクワクとドキドキの楽しい日々を、そしてそれ以上に生み出す苦しみの日々を、過ごしたであろうムッシュの真骨頂をご覧いただきます。お酒でというわけにはまいりませんが、出来れば水を使ってこぼし実演をしながらの楽しい展覧会にしたいと考えています。そんな1ヶ月にしたいと。
 パリで大きな制作活動をし、ひとまわりもふたまわりも芸術家としての懐を拡げている角居康宏。世界的に「ムッシュ角居」と呼ばれて活躍する様を期待してやみません。
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